ファンダメンタル編    


ファンダメンタル的投資法は「株式を購入するのは、その企業の一部を購入するのと同じことである。長期的には株価はその企業の価値を反映したものになる」という哲学に基き、比較的長期的視点に立ってその企業の動向を判断するという手法になります。健全な経営をしている企業に長期間集中投資する(=応援する)ことによって、短期的な株価の昇降に一喜一憂することなく、将来的には利益を見込めるとする意図があります。
この手法で大成した天才投資家としてはウォーレン・バフェット氏が挙げられます。

一般的には
安定した財務体質にある優良企業を見つけるためには 『自己資本比率』
  割安な株を見つけるには   PERPBRQレシオ】
  経営の効率性や収益性を見るには   『ROE』『売上高経常利益率』『総資本経常利益率』
  成長性を見るには   『ROE』『ROA』『売上高成長率』
  配当能力を見るには   『ROE』『配当利回り』

などが用いられます。
また、ホールディングス等の持ち株会社やグループ企業を見る場合には、単独決算ではなく、連結決算で判断する方がより的確だと言われています。

ところで、長期的にみればその企業の営業状況が反映される株価ですが、短期的にはファンダメンタルに関係なく株価は変動します。なぜならば、投資家の思惑が様々に交差して現れるからです。例えば、赤字であっても将来性を見込んで投資する人が多ければ株価は上昇しますし、一見優良な業績であっても本業での利益が減少傾向であれば売りが先行するかもしれません。また、サブプライム・ローンが問題化したアメリカから端を発した情勢不安が世界中に悪影響を及ぼして(無関係な企業の株まで巻き込んで)価格を下落させたように、基本的に投資家は常に不安感に苛まれているものなので、些細な材料から株価を下落させてしまう傾向があります。こういった世相に惑わされることなく、企業の財務体質だけに焦点を絞れるという点でもファンダメンタルは有効です。

また、これはぜひ覚えておいていただきたい重要事項ですが、一端発行された株の利鞘がその企業に還元されることはありません。(株主としての配当は得られるでしょうが)
株式を発行し、その企業が資金を調達してしまえば、株価の下落が原因でその企業の業績が悪化することはなく、株価の上昇で業績までも改善する訳ではないということです。
最終的に調達した資金を効率的に増益に繋げられなければ、株価の下落と共に企業価値を下げ、次回の資金調達を困難にさせたり、企業買収の憂き目に遭いやすくさせたりと、何ら良いことは起こらなくなり結果的に倒産へと追いやられる可能性もあるので、株式上場企業にとっては市場の評価=株価は非常に重要となりますが、株価は企業の業績には何ら影響を与えるこもとなく、好き勝手に動き回っているということです。

「ファンダメンタル分析」は市場を取り巻く環境を把握するために必要であり、「テクニカル分析」は価格と時間の概念をつかむために必要です。
よって、ファンダメンタル分析で投資をする人は参入機会のタイミングを測るためにチャート分析を用いますし、テクニカル分析で投資をする人は自分の判断が間違っていないかをファンダメンタルを確認しながら取引をするものですので、共に基礎以上の理解をしておくように心がけなければなりません。

   ファンダメンタル編   1.基礎    


財務諸表(決算書ともいう)は、企業の財政状態や経営成績などの会計情報を表す一連の報告書です。主要な財務諸表に、貸借対照表と損益計算書があります。
貸借対照表は、財産の残高を示す一覧表です。お金をどこから調達して、どのように運用しているかを示します。
損益計算書は、会社の成績表です。1年間の収入と支出の差額から、会社がどれだけ儲けたかを示します。損益の流れから利益がどのように生み出されてきたかを見ることができます。
キャッシュフロー計算書は、お金の流れを見るための一覧表です。貸借対照表と損益計算書から読み取れる情報を組み替えることで、お金の流れが見えるようにしたものです。
2000年3月期決算から、株式を公開している企業にキャッシュフロー計算書の作成が義務づけられました。

   損益計算書P/L】   Profit & Loss Statement   

売上高−売上原価−販売費−一般管理費=営業利益+営業外収益−営業外費用=経常利益±特別損益=税引前当期利益−税金=純利益

より詳細を知りたい方は他のサイトを回ってみて下さい。ここでは分かりにくいものだけを取り上げます。

営業外収益には、『資本準備金・利益準備金の積立利子』やなど
営業外費用には、『銀行への返済』など

経常利益は経営の実態を最もよく表します
借入金が多ければ営業利益を減らし、利子や賃料収入が多ければ安定した経常利益を形成できるため

特別損益には、『税還付金』、『不動産売却益』、『特別退職金』、『災害損失』など

法人税は赤字企業や再建途上の企業は免除されます。
経常利益と純利益がほとんど同じ場合には税金が免除されていることになりますのでご注意を

   
資本=純資産=資本金+内部留保(資本準備金、利益準備金、剰余金)

資本・純資産・自己資本・株主資本・・・株主に属する純粋な資産の大きさ=企業の財産
歴史のある企業では大きくなる傾向があります。

資本金・・・株主からの出資を受けて集めた資金の合計

資本準備金・・・新株発行時や社債の株式転換時に資本金に組み入れなかったもの。多いほど財務内容が良好の証

1株純資産(円)=純資産÷発行済株数   解散価値とも言います。※PBR
企業が解散した場合に、1株何円になるかの尺度になっており、現在の株価と比較することで割安か割高かの判断に用います。

   
貸借対照表B/S】  Balance Sheet
資産=負債+資本

貸借対照表は、財産の残高を示す一覧表です。お金をどこから調達して、どのように運用しているかを示します。

株主資本比率(自己資本比率)(%)=株主資本÷資産
この割合が大きいほど、借金依存度が低く、財務体質が安定していると判断できます。=不況抵抗力が強い

   キャッシュフロー   Cash Flow   

キャッシュフロー(円)=純利益−配当−役員賞与+減価償却費

キャッシュフローとは、決算時に手元に残る自己資金(現金及び現金同等物)のことです。
キャッシュフロー計算書は、企業のキャッシュの増減を一会計期間で示したものであり、その企業の「お金の流れ」を見るための財務諸表です。
商品やサービスの提供とその売上代金の回収には時間差があります。つまり、どんなにたくさんの売上をあげても、その回収に長い時間がかかって手元のキャッシュが増加しなければ、借入金を返済したり、商品の仕入代金を支払うためにまた資金を借り入れなくてはならず、会社の資金繰りは苦しくなります。

キャッシュフロー計算書の基本的な構造は、キャッシュをどのように使ったかを分かり易くするために『営業キャッシュフロー』『投資キャッシュフロー』『財務キャッシュフロー』の3つに分けられます。

  • 営業キャッシュフロー・・・商品の販売やサービスの提供など、会社が日常の営業活動から得たキャッシュ量を表します。つまり、その会社は1年間に本業でどのくらいのキャッシュを生み出せるのかを判断できます。
  • 投資キャッシュフロー・・・会社が活動するのに必要な資金を表します。主に固定資産の取得や売却がここに入ります。『営業キャッシュフロー』+『投資キャッシュフロー』=『フリーキャッシュフロー』
  • 財務キャッシュフロー・・・会社の資金が不足したときにどのように資金調達を行い、どのように返済したかを表します。
    ※フリーキャッシュフローとは、会社が稼いだお金から、会社が活動するのに必要なお金を差し引いた余剰資金のことで、会社の価値を表します。そのため、会社が経営努力を行う場合の判断基準として利用されます。

   ファンダメンタル編   2.財務指標    



   株価収益率PER】   Price Earning Ratio   

株価収益率PER(倍)=株価÷1株当り利益EPS

株価が企業の利益の何倍であるかを算出して、株価が割安か割高かを判断しようとする指数です。
例;PER(20倍)=株価(1,000円)÷年間1株当り税引き後利益(50円)

企業の業績は収益、つまり1株当り利益に反映されるので、PERが高ければ、利益に対して株価が高く買われていることを示して『割高』、PERが低ければ、利益に対して株価での評価が低いことを示して『割安』=『お買い得』と判断されます。業績発表があって増益率が2倍であったとすると、その時点で予想PERは半分になります。ということは、もとの水準のPERまで買われる=株価が2倍になる、可能性があるということです。
通常、PER20倍前後が割高か、割安かの分岐点と言われています。ちなみにPERが30倍〜100倍以上と大きく買われているような株は将来の成長を見込んで先行投資されている人気株であるとも見て取れます。
ただし、PERには何倍までであれは買いなのかという基準はなく、同業種の銘柄や業界平均PERと比較することが必要で、しかも研究開発に多額の投資をして利益が少なくなっているケース、土地や株式の売却益を計上して利益が加算されているケースもあるので、この指数はあくまで参考程度にすることです。

大体のPERであれば、時価総額と当期純利益から計算することも可能です。
前期の利益ベース……PER(倍)=時価総額÷当期純利益
今期の予想ベース……PER(倍)=時価総額÷予想純利益
※  時価総額とは  株価×発行済株数
     当期純利益とは  EPS×発行済株数

この指標は現在までに生き残っている、つまり有効な指標であるとみなせますが、問題点もあります。

  • PERは業績修正の発表によって一瞬で意味が変わってしまうリスクがある
    • 業績悪化が発表されれば、その途端にPERは割高となる上、株価は当然下がる。ゆえにPERはより割高となり保有する理由は失われてしまいます。
  • 「理論上の株価へ向けて動き出すのが明日なのか半年先なのか分からないことで、投資効率が悪過ぎるのです。」(「選抜レース優勝者が明かす儲かる株の選び方」p.23)

私の経験ではほとんどの株はPER10〜30倍の範囲内に含まれます。また天才投資家においても、「割安株を買えば損も小さくて済む」と考える方もいれば、「PERが十分に高くなったのを確認してから買う」と言う方もおり、一概に○○倍ならばよいというものではないようです。
「我々の調査ではPERと急騰株には低い相関性しかなかった。ある銘柄は急騰前にPERが10倍だったが、別の銘柄は50倍だったという具合に。」ウィリアム・オニール(「マーケットの魔術師」p.230)
ただし、ほとんどの天才投資家はそれぞれがPERについての哲学を持っているようで検討材料としては欠かせないもののようですので、あなたもぜひ記録を残して自分なりの見解をまとめられたらよいのではないでしょうか。

1株当り利益EPS(円)当期純利益÷発行済株数
EPSとは1株当たりの税引後の最終利益(当期純利益)になりますが、今期のデータは当然予想した数値を基にしており、特に企業が発表した数値には期待値が含まれているという点を考慮しておいた方がよいでしょう。

   株価純資産倍率PBR】   Price Bookvalue Ratio   

株価純資産倍率【PBR】(倍)=株価÷1株当り純資産BPS

1株あたり純資産の何倍で買われているのかを見る指数で、PBRが高いほど、企業が保有している資産(現預金・土地・株など)を大きく超えて、過大に評価された株価だということになります。
PBRが高いほど割高、低いほど割安と判断します。
PBRは解散価値の指標でもあり、1倍がその分かれ目(1倍以下なら解散してお金に換えた方が株主にとってはマシという状態)となります。
サブプライムの暴落時には、ホンダ等の優良企業のPBRまでが1倍を割ってしまい、解散価値以下という悲惨な状況になってしまいました。恐るべし!

しかし、この指標にも問題点があります。

1株当り純資産BPS(円)=純資産÷発行済株数
1株純資産とは、純資産を発行済み株数で割ったものです。
純資産とは、資本金、資本準備金、利益準備金などの内部保留の合計額です。

   実質株価純資産倍率Qレシオ】   日本版PBR   

実質株価純資産倍率【Qレシオ】=株価÷1株当り(純資産+含み資産)

Qレシオは、PBRの計算に用いる「純資産」に「含み資産」を加えて計算する指数です。「含み資産」が多額の場合、PBRだけでは株価が割高なのか判別できないために使用されます。
※「含み資産」とは土地などを購入したその当時の価格(簿価)と現在の価格(時価)との差額のこと
実際の純資産価格(簿価ではなく時価)に注目した点ではPBRより優れていると言えます。ただし、企業がどのくらいの含み資産を持っているのかを正確に知る手立てはなく、計算には推定値を使っているため、指数としての信頼性に欠けるのが弱点です。

バブル期の異常に地価が高騰していた頃、企業の純資産にあたる土地や建物などの簿価(貸借対照表などで使われる会計上の価格)と時価(実際の流通価格)との差が大きく開いたことが問題になりました。このままではPBRが正確に機能しないため、それを修正する指標として、日本で生まれたのがQレシオです。
ですが、地価の値上がり率が異常に高かったために、意図に反してQレシオが1を下回る企業が出てきてしまいました。結局これでは正確な企業価値を測ることは難しいので、PBRでも大差ないのではないでしょうか?どちらにしろ、含み資産の計算に問題がないか、十分な検討を加えることが大切です。
これは根本的に日本の会計システムに問題があるとも言えますが、ネット上などで開示している財務情報の更新が格段に早くなっている点を加味すれば、大きく誤差が出ることも少なくなっているのではないでしょうか?

   配当利回り/配当性向   

配当利回り(%)=1株配当÷株価×100
配当性向(%)=1株配当÷1株当り利益EPS×100

配当利回りとは、株価に対して何%が配当金として支払われる予定かをみる指標です。
配当は決算後の年1回、または年2回支払われるもので(金額は株主総会の決議による)、計算のベースとなる配当金額は予測ベースになります。
つまり、通年配当金額は変わらないものとして計算しますので、株価が下落すれば配当利回りは上昇するということになります。利回りが高いほど投資効率が高いと言えるわけです。
ただ、日本の配当利回りは一般に低く、一流企業でも配当を行わないところが多々あります。それは以下の言葉に要約されているでしょう。

「配当は1株あたり利益ほど重要ではない。実際、会社が配当を支払えば支払うほど、会社の体力は弱くなる。内部で必要とする資金を配当してしまうため……」(ウィリアム・オニール(「マーケットの魔術師」p.235)